火災予防法務に懸ける想い

行政書士の山口望です。

今回は、消防士から行政書士に転身した私なりの、火災予防法務に懸ける想いをしたためます。

消防士さえよく分からない消防法

消防法は、消火・救助・救急などの消防機関が行う活動をはじめ、火災予防に関する手続や消防用設備等、危険物に関する規制などを規定した法律です。

特に火災予防に関することは、様々な規制を通じて多くの人々に影響を及ぼす事柄です。しかし、その内容は非常に複雑難解で、残念ながら現役の消防士でさえキチンと説明ができない者が少なくありません。消防法のとっつきにくさには、次のような要因があると考えています。

1 規制の複雑さ

火災予防に関する規定は、建物の形態、消防用設備等の設置、建物関係者に課せられる義務(防火管理等)など、非常に多くの規制が絡み合っています。

そのため、消防法令に即した建築・設備設置計画はもちろん、竣工後の維持管理においても非常に多くの知見が必要となります。

2 地域ごとの違い

実は、消防法の規制は全国一律ではなく、各地方自治体における火災予防条例や運用基準によって、法令の適用や解釈が大きく異なる場合があります。

地域の気候差や都市化の状況などによって、その地域に即した規制を行う趣旨ではあるのですが、それゆえにケースバイケースの対応が要求されるのです。

3 技術的要素

消防法には建築学、電気工学、機械工学などの技術的要素が関連しており、これらの分野に関する知識が必要な場合があります。特に建物の消防用設備等は、これらの知識をベースに個別の要件を理解して設置の要否を判断する必要があります。

4 頻繁な法令改正

消防法の歴史は、過去の大火災や事件との闘いそのものといえます。これまでの教訓を基に、二度と同じ惨事を繰り返さないよう頻繫な法改正が行われています。それゆえに、常に最新の知識にアップデートしていく必要があるのです。

専門家の圧倒的不足、困り果てる当事者

消防法には、建物所有者をはじめ、多くの関係者に対する法的責任が規定されており、法を正しく理解し遵守する必要があることはいうまでもありません。しかし、これらの規定を遵守するためには、高度な専門知識やコンプライアンスのスキルが必要不可欠です。

しかし、一般の方が消防法に関する知識を持ち合わせていることは極めてまれで、そうした業務はハッキリ言って片手間の負担にしかならないものです。(防火管理の重要性を否定するつもりはありません)

一定規模以上の建物には、「防火管理者」などの資格を有する人員を配置することが義務付けられていますが、こうした資格自体も1~2日の講習で得られるもので、適正な防火管理を遂行する上での本質的な理解には及ばないのが実情です。

では、消防手続や防火管理業務に関することで困った時、気軽に相談やサポートに応じられる専門家が存在するかというと、これが全国的、特に地方ともなれば圧倒的に少ないのです。

消防署に行けば、必要な手続や簡単な書類の書き方は教えてもらえますが基本的には自己手続。消防署の立入検査で違反を指摘されても自力で勉強してどうにかする、消防用設備等の設置工事が必要な場合も直接業者と対応していくしかないのです。

火災予防法務を通じて守りたいもの

実際のところ、消防署の立入検査で指摘された違反を放置している事業所は少なくありません。その内容は、軽微なものから火災発生時に大惨事を招くリスクのあるものまで様々ですが、往々にして「今まで火災など起こしていないし、違反していてもお咎めもない」という認識が非常に多いです。

本当にその認識で大丈夫でしょうか?

今まで火災が起きなかったという結果は、これからも大丈夫であり続けるという確証にはなり得ません。その軽率な判断が、建物利用者や従業員の命を脅かすことにほかならないのです。

今までお咎めなしでやり過ごせてきた消防署の指導、これからはそんなに甘くありません。

特に重大な違反を抱えていると、ある日突然違反処理に移行する可能性があります。違反の内容によっては、消防機関ホームページでの建物情報の公表、行政処分、悪質な場合は刑事告発の対象となります。

弊所が取り組む火災予防法務の目的。それは、ハード・ソフト両面の対策を通じて火災発生そのもの、あるいは火災発生時の人的・経済的損失の低減を図ることはもちろん、コンプライアンス遵守による信頼を確保することにあると考えています。

少しでも気になることやお困りごとがございましたら、まずはお気軽にご相談ください。

投稿者プロフィール

山口望
山口望
行政書士。市役所職員として4年間、開発・建築許可審査に従事したのち、消防士に転身。消防隊員を経て、消防法に関する届出審査・建築確認に関する同意・立入検査を担当。1児の父。